数年前に消息を絶った男がいる。
私がフィリピンに滞在している時には、率先して案内役や護衛を請け負ってくれるけれど、適当過ぎて全く頼りにならないフィリピン人、デニスである。
デニスは数年前に奥様の家族を養うため、色々な所で嘘をつき借金を重ねた。
当然隠し通せるわけもなく、嘘が露呈し借金も返済できず次第に連絡が取れなくなった。
ピナちゃんファミリーがデニスの家を訪ねると、もぬけの殻になっていて、デニスとデニスの奥様の家族は姿を消したのだ。
LINK:デニス失踪の引き金となった出来事
フィリピンで姿を消すと「事件に巻き込まれたのではないか?」と心配になる。
しかし近所に住む人が「奥さんの田舎に行くって言ってたよ」と教えてくれたので、「そのうち帰ってくるだろう」と放置プレイ中だったのである。
そんなデニスから数年ぶりにピナちゃんにコンタクトがあったが、相変わらずフリーダムぶりは健在であった。
なんでも闘鶏で稼いでマニラに家を買いたいようなのだ(笑)
壮大な夢物語を聞かされたピナちゃんは「真面目に仕事をしろ」とご立腹の様子であった。
デニスは以前もアンプを拾ってきて「俺はDJになる」と言ったり、「日本で働く」と言って突然仕事を辞めたりする、使い所を間違えている変な行動力があるため、ピナちゃんは心配なのだろう。
「痛い目に合うからギャンブルはやめとけよ」
賭け事でいつも痛い目にあっている先輩として助言をしたが、デニスは「わかってねーな」という顔をして鼻で笑った。
デ「闘鶏で金なんて稼げるわけねーだろ!」
私「お前がマニラに家を買うって言ったんじゃねーか!」
デニスは「ちょっと待ってろ」と言い残し画面から姿を消して、数分後にニワトリを持って帰ってきた。
こいつ‥‥‥鶏主になる気だ(滝汗)
鳥なのにタイガーと名付けられたニワトリを片手にデニスは説明をしてくれた。
ようするに賭けて金を稼ぐのではなく、馬主が馬を育てるようにデニスはタイガー(鶏)を鍛えて闘鶏場のキングとして君臨させる。
そして引退したタイガー(鶏)を闘鶏界のサンデーサイレンスにして、種鶏として余生を過ごさせて、繁殖させたヒヨコを売って稼ぐ算段なのである。
何という柔軟で大胆な発想!
私は賭けるとばかり思っていた思慮の浅さを詫びた。
そして未来の闘鶏王に質問した。
「そんなに痩せた鶏でどうやって戦う気なんだい?」
鶏の目利きなんてした事がない私でも分かるほど、タイガー(鶏)はガリガリに痩せていて、食用として市場に並んでいても売れ残るだろう。
それとも闘鶏の世界でも柔よく剛を制すの真髄で、テクニックや素早さで体格が勝る相手とやり合えるのだろうか?
私などでは到底思いつく事のできない秘策を、闘鶏王デニスさんは持っておられるのだろう。
デ「エサが買えないんだ(´・ω・`)」
えぇ‥‥‥
コロナで仕事を失ったデニスは、葉っぱで作った屋根を売って餌代を稼いでいるのだけど、そのほとんどを奥様の家族に取られてしまい、満足にタイガー(鶏)のエサが買えないのである(涙)
追加情報として、初代タイガー(鶏)はヘビに食べられたので、今のタイガー(鶏)は2代目だとも教えてくれた。
エサ代を送金してくれと言うデニスに、ピナちゃんの返事は無情にも「鶏(タイガー)は食べて家族を大切にして」との事であった。
だけど、どうだろう。
デニスが鶏主として才能を発揮したら面白いのではないか?
JRAのように厳格なルールは無さそうな闘鶏である。
鶏主のデニスから鶏のコンディション等を教えてもらえれば、八百長しほうだいじゃないか。
八百長が見つかって殺されるのは嫌だから実際はしないだろうけど、闘鶏の鶏主って響きが面白いので、「送金させて」とピナちゃんにお願いしている。
後々フィリピンの闘鶏場で、タイガー(鶏)血統の息子達が戦っているのを見かけましたら、是非とも対戦相手に賭けてあげてください。
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ピナちゃんの従兄弟Dことデニスが先ほどスカイプで「俺、日本に行く事になった」と連絡してきた。突然の報告に驚いたが少し心配である。※身バレ防止の為にこれまでデニスの事はイニシャルで表記しておりましたが、Dが付くフィリピン人や私[…]