ピナちゃんの叔父さんはサリサリストアを経営し、いくつかのトライシクルを所有して小さいながらもフィリピンで事業を行っている。
ピナちゃんファミリーの大黒柱である叔父さんの息子に、バブイ君(あだ名)という14歳の少年がいる。
ちなみにバブイとはタガログ語で「太っている」という意味である。
マガンダララキ様よりご指摘を頂きましたので訂正いたします。ありがとうございます。
タガログ語でバブイは豚の事で「豚のようだ」と太っている人に使われるスラングだそうです。
マガンダララキさんのブログはこちら:インジャンメンゴの樹の下で…。
このバブイ君はフィリピーノらしからぬ勤勉な性格をしており、遊ぶ時間があったら勉強をしたいと常に勉強をしている少し変わったフィリピン人である。
日本の家庭では自分達の子供には平等にチャンスを与えるのが一般的であるが、フィリピンのお金の無い家庭では基本的に一極集中型である。
全員にチャンスを与えて教育のアベレージを下げるよりも、見込みのある子供一人に絞り、教育に配分される全予算を投入する事で質の高い教育を受けれるようにする。
ピナちゃんファミリーの中ではバブイ君だけが私立の学校に通っている事からも、叔父さんはバブイ君の将来に期待している事が伺える。
バブイ君はピナちゃんファミリーの時期大黒柱として抜擢されたのだ。
私はバブイ君から人生相談を受ける事がしばしばある。
相談内容はとても14歳とは思えない、将来について、お金の仕組み、経済についてである。
私が14歳の頃は河川敷に落ちているエロ本やどうやったら鋼の拳を作れるか等、頭の悪さを隠し切れない悩み事に思考の全てを使っていたので、当時の私とバブイ君では友達になれなかったであろう。
バブイ君は幼いながらに、フィリピン経済が先進国と比べて劣っている事を知っていたが、来日したピナちゃんから入ってくる情報により、その考えは確信に変わったようだ。
バブイ君は将来、世界で活躍する設計士になりたいと考えている。私も勤勉なバブイ君を応援しようと思っているので、本屋等で建築関係の面白そうな本を見つけると時々送ってあげる。
昨日も新しく送った本が届いたようでバブイ君からお礼のSkypeがあった。
このSkypeもパソコンやスマホを持っていないバブイ君は、お小遣いの中からインターネットカフェ代を捻出して連絡してきている。本当に出来た少年である。
バブイ君はお礼を済ませた後で、時間があるなら話を聞いてほしいと言ってきた。
1.将来設計士になれると思うか?
2.設計士になれば安定した生活を送れるか?
3.どうやったらお金を稼げるのか?
バブイ君はこの3点について聞きたいようであった。
一つ目の「将来設計士になれると思うか?」という質問は、バブイ君の勉強に対する姿勢を見ていると、フィリピン国内で設計士になる事は可能だろう。しかし海外を視野に入れると残念ながら難しいかもしれない。
バブイ君は英語も流暢に話し、会話の内容や考え方も14歳とは思えない。
しかし決定的に不足しているのが計算力である。
これは勉強不足というよりもフィリピンの教育制度が整っていない為、学年一の頭脳を誇るバブイ君であっても、日本の小学生の方が計算は速い。
日本では当たり前のように掛け算や足し引きの暗算が行われているが、海外では当たり前ではない。
ピナちゃんも来日して、定食屋や駅のキヨスクなどで店員が行う素早い計算に衝撃を受けていた。
インド式の掛け算を教えてあげれば良いのだろうが、私はやり方を知らないためバブイ君には日本の九九を教えてあげた。日本のほとんどの小学生はこれが当たり前のように出来ると言うと、バブイ君は驚いていた。
次に「設計士になれば安定した生活を送れるか?」という相談は、答えが難しい質問である。
入る会社にもよるし、バブイ君のセンスの問題も出てくる為だ。それらをクリアしてもフィリピンで仕事をするにはコネクションも重要になってくるだろう。
現時点では「It’s up to you(訳:バブイ君次第だよ)」これしか、応えようがないのである。
バブイ君が大人になって設計士になったら、その時々で私に出来るアドバイスをするよ。と話をしている。
3つ目の「どうやったらお金を稼げるのか?」について度々バブイ君は相談してくる。
この問題は各家庭の教育方針もあるだろうし、親である叔父さんを差し置いて私がアドバイスするのは問題があるので、以前、叔父さんに「私の考えを教えても大丈夫?」と許可を取っている。
すでに時間に付いての考え方や、売り上げと利益の違い、意味のある資産と無い資産の違いなど教えているので、二十歳の頃の私よりバブイ君はお金について知っているかもしれない。
私は「お金を稼ぐ」という行為には、いくつかレベルがあると考えている。
どの程度稼ぎたいのか。どの程度時間を犠牲にできるのか。どの程度リスクを受け入れる事ができるのかで、選択する道は変わってくるので、どこのレベル・属性にバブイ君が属したいのかは、これからの人生で考えなければならない。
私の考えているレベルは以下の通りである。※あくまでも個人的な考えです。
Level.1 収入は無いが働かない。(ニート・失業状態等)
Level.2 雇われて時々働く。(アルバイト)
Level.3 雇われて常に働く。(社員)
Level.4 起業し自分が働く。(個人事業主・職人等)
Level.5 人を雇い自分も働く。(ビジネスオーナー)
Level.6 人を雇い任せる。(ビジネスオーナー)
Level.7 働かないが定期的な収入がある。(家賃・配当金・印税・利息等)
Level.8 私の知らない未知の世界。
教える私の能力が低い事もあるが、一度で子供が理解する内容ではないのでバブイ君には各レベルの説明を毎回行っている。
私の知るフィリピンではLevel.1かLevel.2の割合が高く、その日食べれるお金や、与えてくれる人がいれば働くよりも遊ぶ事が大切だと考えているが、幸いバブイ君は高い就労意欲があり、Level.3を目指しているのが現状である。
今回バブイ君には、叔父さんはLevel.5に属しており、そのお陰でバブイ君は私立の学校に通う事ができ、食べ物にも不自由していない事を説明し、叔父さんがさらにお金を稼ぐ為には、人を雇い任せる事で自分は違うビジネスに取り掛かる必要がある事、それにはリスクを伴う事を教えてあげた。
私は現状Level.4に属しながらLevel.7を目指しているので、最終的には投資についても教えてあげたいのだが、働き続けることが日本のように当たり前ではないフィリピンにおいて、働かないという方法を教えてよいものか考えてしまい深く踏み込めないのである。
人生の先輩として堅い話ばかりではなく、息抜きも兼ねて海外の無修正動画サイトでも教えたかったが、ピナちゃんに怒られた為にバブイ君が18歳の誕生日を迎えるまで待つ事にしたのである。