妻の過去と新たな決意

今朝のピナちゃんは昨夜の出来事など無かったように元気だったが、どこか淋し気で無理をして明るく振るまっているだけだろう。
「大丈夫かい?」と声をかけると、「タイジョブデス(´・ω・`)」と返事をした。
だけど昨夜の事を思い出したのか目には涙を溜めていて、やがてボロボロと涙がこぼれた。

 

ピナちゃんは辛い事があっても自分の中で消化しようとして思い悩むタイプなので、思う存分気持ちを吐き出して楽になってもらいたい。

そして最終的には実母の行為を悲観するよりも、育ての母との思い出の家が無事でよかったと前向きな気持ちになってほしい。

そんな時の私は売れっ子ホステスのように、聞き役に徹するのである。

するとピナちゃんは泣きながら育ての母との思い出を話し始めた。

 

ママが亡くなる前に病気がうつるからと誰も家に来てくれなくなったこと。

近所の人達が二人に食べ物を分けてくれて、それを家に持って帰って食べていたこと。

食べ物を口に運んでも中々食べてくれなくなったこと。

ママの体が骨のようにやせ細り、声も出なくなったこと。

眠っているだけだと思ったら亡くなっていたこと。

抱きついて泣いていると近所の人に病気になるからと引き離されたこと。

病気になってママと一緒に死にたかったこと。

 

涙で言葉を詰まらせながら一生懸命に話してくれるピナちゃんを見ると、私まで涙が込み上げるので「ママと楽しかった思い出を教えてよ」と言うと、ピナちゃんが幸せを感じていたエピソードを教えてくれた。

近所でも乱暴者として知られていたママも、ピナちゃんにはとても優しかったことや、警備の仕事をしていたママが家に帰り制服を吊るすのだが、ピナちゃんが隙をついてポケットを探ると小銭を見つけて、こっそりアメを買おうと思っていたけれど、でもこれがないとママが困るかもしれないと心配になり、結局ママに返したらお小遣いとしてもらえて、近所のサリサリストア(簡易商店みたいなもの)でアメを買ったこと。

 

風が強い日は屋根や壁が飛ばされて無くなる事もあったが、ママが上手いこと修繕してくれたり、家の屋根が無事でも近所の屋根が飛んできて「どこの屋根だろうね(´∀`)」と笑いながら話したこと。

スニーカーを履いてみたかったピナちゃんがママにお願いすると、露店で「こっちの方が丈夫だから」と新しいスリッパを買ってくれたことや、クリスマスになると早朝からママに連れられて、色々な家のドアをノックして「メリークリスマス」と言わされて恥ずかしかったけれど、家の人から小銭かお菓子が貰えて、集めたお金で美味しい食べ物を買えた思い出話を聞かせてくれるうちに、ピナちゃんの顔に笑顔が戻っていった。

 

私「今回はママの家が無事で良かったね」

ピ「・・・ソデスネ(*´Д`*)」

((復活したかな・・・?))

私「よし今日はピナちゃんの好きなところに遊びに行こう!どこでもいいよ」

ピ「お婆ちゃん(・∀・)!!」即答

 

こうして祖母の力も借りてピナちゃんは復活したかに見えたが、祖母の家からの帰り道、まだピナちゃんの心にママへの送金が引っ掛かっている事がわかった。

ピ「太郎のお金ママにセンドしたくナイデス(´・ω・`)太郎カワイソデス」※太郎のお金は送金したくない

私「でも叔父さん達に迷惑かけるから(汗)」

ピ「私はお仕事できないデスカネ? そうすれば太郎は仕事しなくてダイジョブ(´・ω・`)」

タンバイかな?※ヒモ

 

私ほどのポギ(男前)なら花形職業であるタンバイになっても違和感はないけれど、それはあくまでも男前フィルター(配偶者が格好良く見えるフィルター)を装着しているピナちゃん目線である。

花形職業に就いた事が家族、友人、ご近所さんに知られれば、どの面下げてタンバイになってんだと不当な誹謗中傷を受けるのは明白で、何としても避けたい所だが、ピナちゃんの自分が働いて送金したいと思う気持ちも理解はできる。

明日ゆっくり仕事について話をしてみようと思うのである。

 

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