妹想いな物乞いの少年と買い物

フィリピンはストリートチルドレンや物乞いが多い。

同じ東南アジアのタイやベトナムと比べても、物乞いの数が圧倒的に多いし、かなりアグレッシブなのである。

タイはカチカチとカップで地面を叩き、カップにお金を入れてくれと促す守りのスタイルが多いが、フィリピンは食べ残しを欲しがったり、直接「金をくれ」と声をかけてくる攻めのスタイルなだけでなく、中にはチームプレイで盗みを働くテクニシャンもいる。

 

フィリピンへ行く時に心がけているのは、最低限の安全を確保することだ。

危険な地域に近寄らないのは当然だけど、ピナちゃんの実家が思い切り危険な地域にあるため、スリや強盗から「こいつは金を持ってねーぞ」とターゲットにならないよう、Tシャツの首回りを引っ張って伸ばしたり、捨てて帰っても惜しくないラインナップの服か、現地の問屋街で服を揃える事が多い。

留学系のブログで「フィリピンはそんなに危険ではない」と紹介しているのを見た事があるが、それはたまたま危険な目にあっていないだけで、異国の地では十分に注意をする必要はある。

 

ピナちゃんと結婚する前、まだ私達が恋人だった頃、フィリピン滞在中に時々ジョリビーで食事をしていた。

マクドナルドとケンタッキーが融合しパスタ(甘い)や米を足したような店。フィリピンではマクドナルドよりも店舗数が多くファーストフード業界の覇権を握っている。

 

店の外では小学校低学年くらいの男の子が一人で物乞いをしていて、いつ行っても縄張りを守るように同じ場所で店から出た客に声をかけていた。

日本だと違った対応をするけれど、私は海外であれば例え子供であっても物乞いには基本的にガン無視を決め込む。

お金を渡しても親がシャブを買うと聞いていたし、銃が出回っているフィリピンでは子供でも油断はできないため、子供が一人で周囲に仲間がいないと分かればお菓子を上げる程度だ。

太郎
人でなしと言われても余計なトラブルはごめんなんや!

 

だけどジョリビーで食事をするたび、ガラスの向こうで活動する少年が気にはなっていた。

攻めの姿勢を見せるわけでもなく、ただ笑顔を浮かべて手を差し出す。

断られても無視をされても、不貞腐れたり罵声を浴びせることもない。ただ元の位置に戻り次の客が出てくるのを待っているのだ。

 

また別の日も少年はいた。

その日も店の外で両手を差し出し、お金や食べ物を貰おうと頑張っている様子である。

ぼーっと眺めていると小銭が貰えたようで、少年は嬉しそうに貰ったばかりの小銭を入口のガードマンに見せていた。

 

ピナちゃんに目をやると、何か言いたげな顔をして私を見ている。

「食べ物をあげたいの?」と聞くと「これをあげてもいい(´・ω・`)?」と自分のチキンを渡そうとしていて、「それなら少年も誘って一緒に食べよう」と提案すると、嬉しそうに少年を誘いにいった。

お世辞にもキレイな身なりをしているとは言えない少年が入店できるか心配だったが、ピナちゃんが少年と店内で一緒に食事をしてもいいかガードマンに聞くと、少年とガードマンは良好な関係を築いていたのか「たくさん食べさせてもらえよ!」と、快く入店を許可してくれたので、ピナちゃんは少年の手を洗いに連れて行った。

 

少年に何が食べたいのか聞き、後で仲間と合流した時の戦利品用に、少年の食べ物とは別にテイクアウトでいくつか注文することにした。

少年の境遇を聞きながら食事をとると、少年の背景が少しずつ分かってきた。

 

私は勝手に少年のことを、路上で仲間と暮らすストリートチルドレンだと思い込んでいたけれど、少年は両親・妹と暮らしていて家もあるらしい。

日々の物乞いも両親に言われてやっているのではなく、少年が自発的に家族の生活の足しにと行っている事が分かった。

 

太郎
小さいのにしっかりしてる!

 

ブログから溢れ出る気品に誤解されているかもしれないが、実は私も裕福な家庭ではなかったので、お金が欲しいという気持ちは少し分かる気もする。

少年位の歳の頃は私も子供ながらに金策をしていた。

 

同じく金の無い友人と共謀して、ビックリマンシールの偽物のロッチのチの部分を名札のピンで巧みに削り、上手いことテに仕上げて、本物のロッテのビックリマンシールだと偽り上級生に売っていた。

ただ、その売り上げは全て自分のおやつ代として使っていたので、この少年とはえらい違いである(涙)

 

このフィリピン人の少年の話を聞きながら食事をしていると、私はすいぶん恵まれているのだけど昔の自分に重ね合わせたのか、おもちゃを買ってあげたくなった。

ビックリマンブームが終焉し商売も下火になった頃、車の玩具のミニ四駆ブームが到来したのを思い出したのだ。

 

周りの友人達がミニ四駆で遊んでいるのを尻目に、本当は欲しかったけれど親に買ってもらえないので興味のないふりをして、金の無い友人達と山でいい感じのドングリを拾ったり、オナモミを拾ってミニ四駆組を襲撃したり、今となっては正体は不明だが川辺で黒真珠のような木の種を集めて金持ち気分に浸っていた。

年頃の少年も幼い頃の私と同様に、きっと玩具が欲しいだろう。

 

読む方によって私達の行動は何も解決しないし、偽善だとか上から目線だと感じて不快になるかもしれないが、ピナちゃんに「食べ終わったら少年と買い物に行こう」と伝えると、少年は少し警戒した様子を見せたが、一緒に買い物をすることになった。

靴を履いていなかったので靴を購入し、他に何か欲しい物はあるか尋ねると、鍋が壊れていると言うので新しい鍋と日持ちしそうな食べ物を買い込んだ。

 

「おもちゃはいらないのか?」と聞くと「いる(・∀・)!」と言うので好きな物を選んでもらうと、女の子の人形を持ってきた。

そんな軟弱な玩具でよいのだろうか?

「もっと他のロボットや車の玩具でもええんやで」とピナちゃんに伝えてもらうと、「これは妹にあげると言っている」と聞き、なんてしっかり者のお兄さんなんだと衝撃を受けた。しかも自分の玩具はいらないと買わないのである(涙)

 

一通り買い物を終えると私は失敗に気が付いた。

買い物に浮かれていたのか、買い過ぎて少年一人では持って帰れない量になっていた(汗)

少年の身なりから治安の悪い所に住んでいるのは容易に想像できるので、出来る事なら行きたくはない。

「ピナちゃんの実家へは行ってるじゃないか」と思うかもしれないが、それはファミリーの護衛があるから行けるのだ。

 

どうしたものかと考えていると、ピナちゃんが「私はフィリピン人だから大丈夫。太郎は待ってて。」と一人で持って行こうとするので、ピナちゃんを危険に晒すくらいなら「俺もフィリピン人みたいな顔だから大丈夫だ。俺が持っていく。」と言うと、「危ないからダメ」とピナちゃんに止められた。

そこで、たまには役に立ってもらおうと、仕事をしていないピナちゃんファミリーの中でも人相が悪いのを「晩飯を奢る」と一人呼び寄せて、お供としてついてきてもらった。

 

想像通り少年の自宅は中々の場所にあった(汗)

そして驚いたのは家に屋根がない‥‥‥

雨が降ったらどうするのだろうか?と心配である。

日本ならビニールシートやポリカボードを買って簡易施工してあげる所だけど、小心者の私は見なかったことにして撤収したのである。

 

 

今でもたまに少年の事を思い出し後悔していることがある。

買い物をしている時に少年の将来を考えて本を買いたかったのだが、字が読めないと言うので食べ物ばかり買ってしまったのだ。

その時は考えもしなかったけれど今になって思うと、手に職をつけられるような靴磨きセットなんかを買っておけば、物乞いをするよりも効率よく少年はお金を稼げたのではないかと思うのである。

 

本日の記事は物乞いやストリートチルドレンに積極的に係わろうというものではありません。

私達は勢いで家まで行ってしまいましたが、取り返しのつかない結果を招くことになりかねないリスクのある行動なので、安全だと思った場合のみ小銭や食べ物を渡すくらいにしましょう。

 

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