鬼教官太郎の特訓!ピナちゃんバスに乗る!

ピナちゃんは小心者である。

幼い頃からスラム街で育った生活環境が、より警戒心を強めている所もあるって、来日当初は外は危険な場所という認識があり、一人で外出する事も怖がっていた。

 

日本は安全だと言い聞かせ共に行動するうちに、次第に日本の治安を実感してきたのだろう 、自分の生活圏内(家とデパートを結ぶ地域)は、一人で自由に行動が出来るまでに成長した。

そして昨日、さらなる成長を切望して「一人でバスに乗る」という、大仕事をやってのけたのである。

 

そもそもバスに乗ろうと思ったきっかけは料理教室へ行く為である。

料理が好きなピナちゃんは、本格的な和食が作りたいと常日頃から研究している。

 

しかし私はからっきし料理ができないので教える事はできない。

せいぜい和食のレストランに連れていく位だ。

 

本や動画、クックパッド等で勉強したピナちゃんの料理は、私からしてみれば美味しく満足できるレベルに達しているのだが、もっと本格的な和食にも挑戦したいのだろう。

そこで料理教室に行ってみようか!となったのだ。

だがピナちゃんの生活圏内に料理教室はなく、良さそうな料理教室はピナちゃんの愛車ピーナッツ号(自転車)で通うには遠く、行き帰りの心配がある事からバスに乗る必要性が出てきた。

 

以前にも勉強の為、二人でバスに乗った事はあるが、数ヶ月も前のことでいささか心配だ。ピナちゃんも不安そうである。

しかし近い将来、バスに乗れないのは「子供と出かける時に困るのではないか」と考え、心を鬼にして一人でバス乗る特訓を実施する事にした。

 

不安そうなピナちゃんにバスの乗り場と系統番号そして行き先表示を教え、バスに乗ったら220円支払う事を伝えた。

「一緒に行きましょ」というピナちゃんだったが、そこにいるのは、いつもの優しい私ではない。鬼教官太郎なのである。

(゚Д゚)NO!

 

ピナちゃんの訴えを拒否し、目的地に着いたら電話をするように言いバス停へと送り出した。

「獅子の子落とし」という、ことわざがあるように、ライオンは我が子を崖に落とし、試練を与える事で成長させる。

しかし私はライオンではないので、ピナちゃんの姿が見えなくなるとすぐにピーナッツ号(自転車)を走らせ、一駅手前のバス停へと向かった。

 

幸い休日はバスの本数も少なく、30分間隔のためピナちゃんの乗車するバスは容易に特定できる。

駐輪場にピーナッツ号を停め目的のバスに乗り込むと、身を隠すようにして座った。

 

バスはピナちゃんのいるバス停へと走る

果たしてピナちゃんはいるのだろうか・・?不安になって家に帰ってないだろうか・・?

いた!!

遠目からでも分かる、あの天使のような美しさは間違いなくピナちゃんである。

 

系統番号と行き先を目視できたのか、(`・ω・´)ノピッ

手を上げてバスを停めようとしている。タクシーと混同しているようだ。

 

いよいよバスに乗り込むピナちゃん、ここで痛恨のミスを犯す。

降り口から乗り込んだ・・・

そして、「どこにお金を入れるんだろう(´・ω・`)?」と言った顔でキョロキョロしている。

お金を入れる所がないので運転手に近づき話しかけた。

ピ「アノ、初めて乗るデスケド……お金……(´・ω・`)」

運「ここ」

ぶっきらぼうに答える運転手さん。

日本人のホスピタリティは何処へ行ったのか、もう少し優しくしてあげて(涙)

 

怖かったのか、緊張してるのか、おちょぼ口になっている。

無事に席へ着き、後は降りるだけだと思っていたが

ピ「アイッΣ(゚д゚;)」チャリーン

バスの揺れでピナちゃんは小銭を落とした……

コロコロ転がる小銭……

助けてあげたい、拾ってあげたい……

 

しかし今日は特訓なので、心の中で声援を送るだけである。

揺れるバスの中、小銭を拾いにいくピナちゃんに救世主が現れる。

ピナちゃんと同い年位の女性二人組みが、小銭を拾って話しかけてくれた。

女「どうぞ(^∀^)」

ピ「アリガトポ(*´Д`*)」

女「大丈夫ですか?」

ピ「ハイ、ダイジョブデス! 今日バス初めて乗るデス(´∀`*)」

女「すごーい。どこまで行くんですか(^∀^)?」

何て良い子達なんだろう。日本人の鏡である。

 

目的のバス停になると女性が教えてくれて、ピナちゃんは無事に下車する事ができた。

ピナちゃんが下車した後、私も人に紛れてバスを降り、女性に手を振っているピナちゃんの背後から話しかけた。

私「やぁピナちゃん、何してるの?」

ピ「Σ(゚д゚;)タロウ、何でいるデスカ?」

私「何でだろうね(笑)」

ピ「バスに乗るできたデス(*´Д`*)」

私「本当に?誰かHelpしてくれたんじゃないの?」

ピ「Helpもありましたデスケド、乗るできるデスヨ(´・ω・`)」

私「おーさすがだね!じゃあ一緒に帰ろうか」

ピ「(・`ω・)bオポ(訳:はい)」

 

こうしてピナちゃんのバス特訓は無事成功?した。

優しい二人の女性には感謝している。

そしてピーナッツ号(自転車)は駐輪場に忘れて帰ったので、盗難にあったとピナちゃんは騒いでいた。

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