フィリピン人妻が人生に幸せを感じる瞬間

フィリピン人妻のピナちゃんは乳酸菌飲料のヤクルトが好きである。

祖父母宅へ行くたびにヤクルトかオロナミンCを勧められ味を覚えてしまったのだ。

日頃ピナちゃんが愛飲しているのは水かお茶で、ジュースは何かのイベントの日くらいしか口にしないが、ヤクルトだけは時々購入して飲んでいた。

 

私にはお気に入りのインド料理店があるのだけど、勝手に日の丸を背負っている気になってしまい、爪痕を残そうと辛さをマックスで注文してしまう。

手加減を知らないインド人シェフにより、子犬が食べたら死ぬのではないかと思う激辛カレーが提供され、私はラッシーをお代わりしながらカレーを涙目で平らげる。

そして毎回、腹と尻が痛くなるのだ。

 

そんな時、冷蔵庫にヤクルトがあれば、腹と尻の痛みをビフィズス菌に何とかしてもらおうと、2~3本並べたヤクルトのフタに指を突き刺し穴をあけ一気に飲み干すのだが、ピナちゃんに目撃されると「ヤクルトは1本ずつ飲んでクダサイ(*`Д’)」と怒られるのだ。

フタに穴をあける前だと大慌てでヤクルトを回収しにきて、私は1本だけ飲むことを許可され「これじゃビフィズス菌が足りない」と訴えても代わりに牛乳を用意される。

『牛乳にビフィズス菌は入ってないんやで…』と思いながらも、大して痛みは変わらないので甘んじて受け入れている(涙)

 

ヤクルトがピナ山家において貴重品扱いされるのは理由があって、フィリピンでもヤクルトは販売されているのだけど、当時のピナちゃんには高くて手が出せなかった憧れの飲み物なのだ。

私も子供の頃はヤクルトはすぐに空になるから、フタに爪楊枝で穴をあけて出る量を調整してチビチビと飲んでいたし、ヤクルトの特別感は何となくわかる。

 

数日前、ピナちゃんが朝から真剣な表情をして「いつもありがとうゴザイマス。私はこんなに幸せな人生になるとは思ってませんデシタ(・∀・)」と言ってきた。

突然どうしたんだと困惑しながらも「俺もピナちゃんのお陰で幸せだぞ!」とキリリとした表情で返事をしたが、テーブルに目をやると空のヤクルトが置かれていた。

幸せを感じるポイントがヤクルトなのである(笑)

 

ピナちゃんは現在、分骨してもらった小さな骨壺の前に祖母の好きだったヤクルトを料理とは別に毎日お供えしている。

毎朝「おばあちゃんイタダキマス(*´Д`*)」と手を合わせ、お供え物のヤクルトを飲んでピナちゃんの1日が始まる。

特別な飲み物だったヤクルトが日常に溶け込みはじめ、もしかすると近い将来ヤクルトをジョッキで飲んでも怒られない日が来るかもしれない(願望)

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