ピナちゃんは自身の日本語が上達しているのか心配していた。
傍らから見れば知っている単語や漢字だけでなく色々な言い回しも増えてきているし、ご近所さんや友人との会話もスムーズになっているので明らかに成長しているのがわかるのだが、公文で習う漢字も難しい字が増えてきて、以前のように簡単に覚える事が困難になってきたので不安に思っているようなのである。
私「心配しなくてもすごく上手になってるよ。」
ピ「でも公文の宿題、前より時間かかりマス(´・ω・`)」
私「それは漢字が難しくなってきたからね。仕方がないよ。」
ピ「後ではもっと難しいデショ? ダイジョブデスカネ(´・ω・`)?」
ピナちゃんはまだ習っていない未知の漢字をチラシや外出先で目にするたびに、本当に覚える事ができるのか心配しているようだった。
確かに外国人からすれば漢字を使いこなす日本人はクレイジーに思えるだろう。私も中国の簡体字を覚えろと言われれば想像しただけで過酷な勉強をしないといけないのは明白なので、ピナちゃんの気持ちも何となくわかるのである。
これは何とかして自信を回復させないといけませんな!
そこで私は本棚から1冊の本を取り出して「これを読んでみて」と、ピナちゃんに手渡した。
この本は”10分で読める物語”という色々な物語が収録されている本で、平仮名を覚えたピナちゃんの次のステップとして、公文へまだ通っていなかったピナちゃんの自宅学習用の教材として利用していた、小学校1年生向けの本である。
この本には初めて見る漢字や単語が多く、最初に収録されている”子熊さんの考え違い”という、ホオズキの実をめぐって子熊と猫がひと悶着起こす物語を読んだ時点で挫折してしまった。
漢字嫌いになってはいけないので本棚に封印する事になった悲しい過去を持つ本なのだ。
ピ「この本は難しいダカラ・・・(´・ω・`)」
私「いや、大丈夫だよ!ピナちゃんならいけるよ!」
過去のトラウマからか「桃太郎じゃダミ(‘A`)?」と得意な他の本を提案してきたり、「チョトお皿洗いマスネ(`・ω・´)」と台所へ逃げようとしたりして、10分で読める物語を読む事に抵抗していたが、大丈夫だからと強く勧められ渋々読み始め、パラリパラリとページをめくると何かに気が付いたようである。
太郎!意味が分かりマス(*´Д`*)オオーイ!!
当時理解できなかった小学校1年生の漢字も現在は完ぺきに覚えているし、この本より難易度の高い話も公文で習っているので読めるのは当然なのだけど、以前は読めなかった本が読めて意味を理解できた事が嬉しかったようで、風呂にまで持ち込んで湯船の中でも読書に付き合わされた(汗)
ピナちゃんが読む本は料理本かファッション誌、私の好きな建物のデザイン系の本ばかりであったが、ストーリーのある本を読む事が好きになれば、いずれは歴史や経済の本等にも興味を持ち知識の幅が広がるのではないかと考えているのである。
最近は読書に飽きないように日向ぼっこをしながら読書をしたりカフェに出かけて本を読んだりと、家だけではなく日常のちょっとした時間に本を読む事を習慣づけている。
今はまだ子供向けの本であるが、真剣に本を読んでいるピナちゃんを見ると、いつか喫茶店でファッション誌ではなく新聞を手に取り、経済について一緒に話ができる日がくるかもしれないと密かに期待している。