たこ焼きを怖がる小心者のピナちゃん

フィリピン人はカラオケが大好きである。
何かイベントがあるとフィリピンではカラオケをレンタルして自宅でパーティーを開催する。

ピナちゃんはフィリピンで生活している時は、あまり歌を知らなかったので、呼ばれたパーティーでカラオケがあっても歌うことは無くダンス専門であった。


来日して間もない頃、ピナちゃんはカラオケで歌ってみたいと言ってきた。
ピナちゃんの持ち歌は当時はまっていた石川さゆりの『津軽海峡冬景色』だけであったが、演歌なのにダンス付きで何度も同じ曲を熱唱していた。

私は歌が上手いほうではないが、音痴なピナちゃんからしてみればプロ並みの歌声である。
「スゴイ!!カクイイ!!(*´Д`*)」と、常に私を褒めちぎり、どんな曲を歌っても全力でダンサーになってくれるので、私もご満悦であった。 

ただし常に全力で踊るので力尽きるのも早い。
次第にピナちゃんのダンスに切れが無くなり。同様に私も津軽海峡冬景色に合わせて、タンバリンを振り続けたお陰で腕がパンパンである。
フリータイムで入ったというのに、開始1時間を待たずして力尽きてしまった。

ピ「お腹がすいたデス(´д`;)ハァハァ」

私も少し休みたかったので、休憩も兼ねて食事を注文する事にした。
適当にピナちゃんが好きそうな物を頼みソファに横たわり待っていると、続々と注文した品物が運ばれてきた。

初めて目にする食べ物も多くピナちゃんは大興奮なのであったが、その中に『たこ焼き』があった。
日本ではポピュラーなたこ焼き。おそらくフィリピンにもあると思うのだが食べた事は無いらしい。

手軽だが美味しいたこ焼きに喜んで食べてくれるだろう。食べやすいように、たこ焼きの盛り付けられた皿をピナちゃんの方に寄せると。

Σ(゚д゚;)アイッ!?

(`・ω・´)つスッ

(((( ;゚д゚)))アーーーーーーーイッ!!

何故だか、たこ焼きに怯えるのである。なんでそんなに驚いているのだろうか?

私「どうしたの?大丈夫だよ(`・ω・´)つスッ

ピ「ダミデス!! ダミーーー(´;ω;`)」(訳:駄目!だめーー!!)

私の手をツンツンと突いてくる。皿を置かせようとしてるのだろうか?

ピ「タロウ! アビナイ!! ムービンしてマス(´;ω;`)」(訳:太郎!危ないですよ動いてます。)

もしかして・・カツオブシが怖いの?

ピナちゃんは、たこ焼きに乗っているカツオブシが熱でユラユラと揺れるのを、謎の生物が生きていると勘違いして怯えていたのである。

私「生きてないよ。熱で揺れてるだけだよ。」

(((( ;゚д゚))) イィィィィ!!

部屋の隅へと逃げたピナちゃんは、カツオブシを指差しながら何か訴えかけているが恐怖で声にならない。「何で見えないの?動いてるでしょ!」と言いたげである。 

私が食べて安全だという所を見せても、たこ焼きに近寄ろうとしない。
しだいに熱が冷めカツオブシの動きが止まると、ようやく警戒しながら近づいてきた。

しかし余熱でカツオブシがピクリと動く度に Σ((゚Д゚ノ)ノビクゥ!!
どれだけ気が小さいのであろうか・・その日ピナちゃんはタコ焼きを食べる事はなかった。

そんなピナちゃんも今ではカツオブシでダシを取った味噌汁を作り、タコ焼きも丸く焼き上げる事が出来るようになった。今日は昼にタコ焼きを食べながら、そんなピナちゃんを思い出した。

フィリピーナの心を掴む

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