「日本人はすごいデスネ」静かに列に並ぶ人達を見て、ピナちゃんは呟いた。
日本人からすれば当然の光景も、外国人であるピナちゃんには新鮮に見えるのだ。
ピナちゃんは日本で生活する中で日本を知れば知るほど「日本国」「日本人」が好きになってきている。
ゴミの落ちていない清潔な街・信頼できる警察・懸命に働く人々・窓を開けて眠れる治安・規律を守る国民性。外国人から見る日本には、日頃私達が意識していない良い部分がたくさんあるのである。
昨日デートをしていた時の事だ、レストランから出ようとするとピナちゃんの大切にしている日傘が無い事に気が付いた。
どうやら先ほど乗ったタクシーに忘れてきたようである。
この日傘は街を歩く日本女性がこぞって日傘をさしていたので、その姿に憧れたのか普通の傘をさして散歩に出かけようとしているピナちゃんを見て、女性には日傘は必需品なのだと思い、二人で選んで買ったピナちゃんにとって大切な日傘なのである。
私からのプレゼントを大切にするピナちゃんの落ち込みようは相当なものであった。
自分の失態を嘆き失くしてしまった事を謝ってきていた。
ピ「ゴメンナサイ(’A`|||)」
私「多分、大丈夫だよ。」
ピ「ナニガ大丈夫デスカ(’A`|||)?」
私「日傘は戻ってくると思うよ」
ピ「駄目デス。タクシーのドライバーゲットするデス(’A`|||)」
私「日本人はスティールしないと思うよ」
ピ「本当デスカ(’A`|||)?」
領収書を取っていたのでタクシー会社に連絡をすると、ドライバーに確認して折り返し電話をくれる事になった。
5分後、タクシー会社から電話があり、日傘は後部座席に忘れていたので、後ほどドライバーから直接電話をすると伝えられた。
こうしてあっさりと日傘は見つかったのである。
私「日傘あったよ」
ピ「(゚ロ゚;)エエ!? ウレシイデス!!」
私「後で、タクシーの会社まで取りに行こうね」
ピ「オポ(*´Д`*)ウヒー」
数分後にドライバーから連絡が入ったので迷惑を掛けた事を謝罪し、後で会社まで取りに行くので仕事が終わったら会社へ預けておいて下さいとお願いした。
しかしドライバーは「自分が確認をしなかったのが原因なのでレストランまで届けます。少し離れた場所にいるので30分待っていてくれませんか?」と言ってきた。なんて優しい人なのだろう。
その事をピナちゃんに伝えると、日傘が返ってくる事の喜びとドライバーの人柄に感動し大興奮であった。
ピ「太郎!ドライバーにアリガトがしたいです(*´Д`*)」
『ありがとうがしたい』とは、お礼がしたいという意味である。お世話になった場合はお金以外の物でお礼をするのが日本の文化だと教えているので、ドライバーに何かプレゼントをしたいようなのだ。
私「運転中に喉が渇くかもしれないから、飲み物を買ってあげたら?」
ピ「おぽ(*´Д`*)」
私が小銭を渡そうとすると「ダイジョブデス(`・ω・´)」と、愛用しているヒヨコのガマグチ財布を取り出し、コンビニへと向かった。お礼は自分のお金でしたいようである。
コンビニから出てきたピナちゃんは飲み物の他に自分の好きなお菓子も買い込み、ドライバーをレストランの外で待っていた。お菓子は邪魔にならないか若干不安ではあるが、ドライバーに聞いてみようと思い何も言わず待っていたのだが、ピナちゃんは我慢できずチロルチョコを食べ始めた。
(`・ω・´)パクパクパクパク
運転手さん早く来てー!!
しばらく待っていると先ほど乗った車種のタクシーが私達の前に停まり、運転手さんが駆け寄り謝ってきた。
運「すみません、忘れ物に全く気が付きませんでした。」
私「こちらこそ御迷惑をおかけして申し訳ありません。」
ピ「忘れ物してゴメンナサイ(´・ω・`)」
謝り合いが続いた後で、ピナちゃんはコンビニの袋を運転手に差し出した。
ピ「よかったらドウゾ(*´Д`*)アリガトポ」
運「いえ、そんな、申し訳なくて頂けませんよ」
(’A`|||)ダミナノ? (訳:駄目なの?)
運「あ・・・・頂きます。ありがとう。」
しょんぼりするピナちゃんを見て飲み物とお菓子を受け取ってくれた。優しい運転手さんである。
返ってきた日傘を持って運転手さんを見送った後、ピナちゃんは日本人の真面目で優しい人柄に改めて感激していた。
こうして実際に体験した日本人の人柄は逐一スカイプでフィリピンの家族へと報告され、日本人のイメージがピナちゃん家の界隈で向上していくのである。
同じ日本人として昨日の運転手さんの行動は誇りに思う。