今日はピナちゃんを連れて、私の祖父母の所へ遊びにいった。
私達の住む家から車で2時間程の、少し離れた所へ住んでいる為に小旅行のような気分である。
あいにく祖父は友人と温泉旅行へ行っているため家を空けているが、ピナちゃんは早起きして祖母の為に筑前煮を作り、食べてもらうのを楽しみにしていた。
出かける支度をしている私達に祖母から電話が入った。
祖母「まだ来ないの?早くピナちゃんの顔が見たいなー(´・ω・`)」
私「もうすぐ家を出るから待っててね。ピナちゃんが筑前煮を作ったから一緒に食べようね」
5分後・・・プルルルル
祖母「まだ家を出てないのかなー、婆ちゃんも1品料理作ろうかなー(´・ω・`)」
私「すぐに出るから待ってて(笑)」
ピナちゃんが遊びに来るのを待ちわびているようだ。
お化粧中のピナちゃんに祖母からの電話の内容を伝えると、目の周りに塗る化粧が崩れないようにする為か、天井を見上げて涙を浮かべて耐えている。
何気ない祖母からの言葉だが、ピナちゃんには涙を浮かべるほど嬉しい理由があるのだ。
私達の結婚は周りから祝福されるものではなかった。
離れて暮らす祖父母も結婚には当然反対した。
お年寄りのフィリピン人に対するイメージは私達の世代よりも悪く、最初は会う事さえ拒まれていた。
結婚前にピナちゃんが短期滞在ビザで来日し、父、母、兄弟が少しずつピナちゃんを受け入れ始めた頃、私は祖父母にもピナちゃんと結婚したい事を伝えて優しい人柄等を説明していた。
しかし祖父母の結婚に反対する意思は固く、一向に会おうとしなかった。
そんな状態にある事を知らないピナちゃんは、来日中に私の家族へ紹介する事を予定していた為、太郎のおじいちゃん、おばあちゃんに早く会いたいデス(*´Д`*)と、祖父母に会う気満々であった。
しかし数週間が過ぎても顔合わせの予定が決まらない事に、ピナちゃんも薄々気がついたようだった。
ピ「おじいちゃん、おばあちゃん、会うしたくナイデスカネ(´・ω・`)」(訳:会いたくないですかね?)
その頃は会う気がないのなら祖父母の家へ押しかけ、それでも受け入れられないのなら、悲しいが二度と行かないでおこうと考えていた。
突然否定されてはピナちゃんのショックも大きいので、事前に現在の状況を説明した。
ピ「……フィリピン人嫌いデスカ(´;ω;`)?」
私「フィリピン人だけじゃなくて、外国の女性と結婚するのが受け入れられないみたい」
ピ「私がんばるデスヨ、日本のカルチャーもアクセプトするデスヨ(´;ω;`)」
私「心配しなくてもいいよ、何を言われても俺はピナちゃんを選ぶから。」
ピ「私は太郎のライフお邪魔してマスカ(´;ω;`)?」
私「お邪魔じゃないよ。俺はピナちゃんが一緒にいてくれる事が一番幸せだからね。」
けじめを付ける為にも辛い思いをするかもしれないけれど、一度会って話をしようと決めて、祖母に会う気がないなら押しかけると連絡をいれた。
祖母「……○○日においで。じいちゃんはいないから」
あら?会ってくれるの?
話を聞いてみると、祖母は当初から私の妻になるピナちゃんに会ってみたかったのだが、反対するのが祖父だけになると祖父だけ悪者になるので、反対するふりをしつつ祖父を説得してくれていたようだった。
祖母と初めて会う日、ピナちゃんは緊張と不安で今にも泣きそうになっていたが、実はピナちゃんに会う事を楽しみにしていた祖母が温かく向かえてくれた事で、ピナちゃんの顔にいつもの笑顔が戻った。
言葉の壁があり話はスムーズに出来なかったが、私が通訳をして口を出す必要がないほど心は通い合っているようであった。
甘えたり、肩をもんだり、掃除を手伝ったりするピナちゃんが可愛くなったのか、その日から祖母は祖父だけではなく、他の家族に対してもピナちゃんと私の結婚を認めるよう後押ししてくれるようになったのである。
初めて会った日の帰り際、祖母がピナちゃんに話しかけた。
祖母「悲しい気持ちにさせてごめんね。婆ちゃんが爺ちゃんにお話しておくからね。婆ちゃんはピナちゃんの味方だからね。」
ピ「味方(´・ω・`)?」
味方という日本語を理解していないピナちゃんに、「ピナちゃんのサイドって事だよ」と意味を教えてあげると。
。゚(゚´Д`゚)゜。オバアチャン
祖母が受け入れてくれた事を知り、ピナちゃんは嬉しくて泣いた。
こんな理由があった為、電話での何気ない一言でも、受け入れてもらえた嬉しさから、ピナちゃんは未だに涙が込み上げてくるのである。