ピナちゃんは近所のお年寄りから人気がある。
シルバー人材センターから派遣されてくるお年寄りと一緒にマンションの掃除をしたり、クリーニング屋のお婆さんに日本語を習っていたりと、数名のお年寄りと交流がある事は知っていたが、私の知らぬ間に想像していたよりも巨大なご近所お年寄りネットワークを構築していたのである。
私は町内会には属していないが近所付き合いは嫌いではない。
ただし大半のご近所さんとは会えば挨拶をする程度で、一部を除き深い交流はない。
現在住んでいるマンションはピナちゃんの来日に合わせて、何か問題があった時にすぐ駆けつけれるよう、私の職場に近づく形で引っ越しをした。
数ヶ月ほど私の方が長く住んでいたので、当初は私に連れられる形でご近所さんに会えば紹介したり、あいさつをしていたのであるが、最近は逆転現象が起きてきてピナちゃんに紹介される事が増えてきた。
一緒に出かけていると、やたらとお年寄りが話しかけてくるのである。
ピナちゃんが私よりもご近所さんと仲が良いのは何となく気が付いていた。
なぜならピナちゃんはよく物を貰ってくるからである。
貰い物の大半は食べ物で、ちょっとしたお菓子や畑で取れた野菜、釣りたての魚を頂いたこともある。
ピナちゃんに何かあげると全身で喜びを表現するので、あげたくなる気持ちは分かるのだが、全く知らない仲であればそのようなプレゼントをするとは思えないので、有る程度親密な関係になっているのだろう。
知らない人から物を貰ってはいけない事と、知り合いでも高価な物とお金は貰ってはいけないと教えているので、その範疇を超えない限りは黙認している。
先日、一組のご家族が階下に引越しをしてきて、ご夫婦が引越しの挨拶にきたのだが、私は仕事で家を空けておりピナちゃんが対応をしてくれた。
家に帰ると昼に引越しの挨拶があり、お菓子を頂いた事、家族構成や仕事の話をした事、その一家は山から来たことを話してくれた。
山から来たという言葉に、どの程度の山なのか?その一家はどのような生活を営んでいたのか興味が沸いたが「早口で良くわかりませんデシタ」と言っていたので、何か効き間違えかもしれないので、触れないでおこうと思ったのである。
後日、お礼も兼ねて挨拶に伺うと奥様が対応してくれて、山梨県から仕事の関係で引っ越してきたのだと知った。ピナちゃん情報を信じて「山から来たのですか?」等と聞かなくて良かったと胸を撫で下ろしたのである。
挨拶と自己紹介を済ませたので話を切り上げようとしていると、奥様の後ろからお婆ちゃんが声をかえけてきた。
ば「あらっ?ピナちゃん?」
(`・ω・´)?
ピ「あっ!おばあちゃん(´∀`*)コンニチハ♪」
知り合いなの?
話を聞くと、暗証番号を忘れてマンションに入れなかったお婆ちゃんを見つけて、暗証番号を教えてあげたのをきっかけに話をするようになり、つい先日スーパーへ買い物に行く途中に出会い一緒に散歩をしたとの事だった。
ピナちゃんにはお年寄りを惹き付ける何かがあるのか、あるいは勝手に引っ付いていくのか、引っ越して数日の間にすでに二人はコンタクトを取っていたのである。
これには私だけでなく奥様も驚いていたが、そんな二人を気にも留めずお婆ちゃんはピナちゃんに大量の饅頭やドラ焼きを手渡そうとしていた。
「そのままお菓子を渡しては失礼でしょ」と言う奥様を押しのけ、ピナちゃんにありったけの和菓子を手渡すお婆ちゃん。
私「お気遣いなさらないでください、お気持ちだけ頂きますので」
ば「いいから!いいから!・・ところであんたがピナちゃんの旦那かい?熊みたいな男だね。」
我が家も人の事を言えないが、どこのお年寄りも頑固である。サラリと失礼な発言をしつつも全く引く気配が見られないのである。
ピ「太郎は熊じゃないデスヨ!ゴリラデス(‘A`)」
それはフォローなのかい?
お婆ちゃんの発言に謝ってくる奥様に「気にしないで下さい。」と言っていると、ピナちゃんは受け取ったドラ焼きを「アエーイ(‘A`)」と、私の目の前にヒラヒラとさせてくる。
人目があるので私が反撃してこないと思い強気なのである。
和菓子のお礼を言いエレベーターへ乗り込んだが、そこでもしつこくドラ焼きをチラつかせてくる。
エレベーターでも音が漏れるので反撃がない事を計算しての挑発行為なのだ。
玄関のドアを開け室内に入ったとたん「ゴメンナサイネ(´・ω・`)ジョウダンデスヨ。」と、コロリと態度を変えるフィリピン人妻。
私「はい。和菓子を置いてね」
ピ「・・・ハイ(´・ω・`)チョットにシテネ」
先ほどの仕返しに全力でくすぐってあげた。
(;Д;≡;д;)ア-ヨ-コ-!!(訳:イヤ~)
この出来事でピナちゃんの与えられ体質の片鱗を垣間見る事ができたのである。
ピナちゃんのお年寄り好きで懐く性格と、若者の面倒を見てあげたいお年寄りの性格が最高の相性のようで、お年寄り限定の幅広い近所付き合いが生まれたのだと考えている。
その他にも色々とご近所エピソードはあるのですが、またの機会に紹介できればと思います。