老夫婦の愛

祖母が体調を崩した。

肺の悪い祖母は近所の病院へ通院をしているのだけど、近頃は少し動いただけで息切れをおこしてしまい、布団へ横になって休む時間が増えていた。

 

元号が変わり世間が盛り上がる中、令和のエロ動画はVR(仮想現実)だとツイッターで教えてもらったのでVRゴーグルを調べていると、祖母から「胸が苦しい」と連絡が入った。

祖父は膝の古傷が痛むらしく温泉で療養中なので、祖母の様子を確認できる者はおらず、ピナちゃんには友人の悩み相談に乗ってくると嘘をついて、急いで祖母宅へ向かったのである。

 

祖母はゼエゼエと呼吸が荒れていて、苦しくて眠れないと言っていた。

しばらく背中をさすっていると楽になったのか、横になって眠りにつくが20分もしないうちに目を覚まし「苦しい」と訴えてくる。

いつもより様子がおかしいので「病院へ行こう」と説得するのだけど、病院での検査が嫌いな祖母は頑なに病院へ行くことを聞き入れない。

 

結局、朝まで少し眠っては目を覚ますのを繰り返し、さすがに私も眠たくなってしまい、寝ている間に何かあってはいけないので兄を呼び昼から交代してもらった。

夜からは姉を招集しようとしたけれど、祖母は「嫁いだのに迷惑をかけてはいけない」と再び私が指名され、二夜連続で祖母宅へ泊ることになった。

さすがに二日連続での外泊はピナちゃんも「本当にお友達デスカ?(´・ω・`)?」と怪しみはじめて本当の事を伝えるか迷ったが、フィリピンへの里帰りを控えているピナちゃんは祖母の体調が悪い事を知ると、「帰らない」と言い出しかねない。

今回の里帰りは育ての母の骨を持ち帰る大切な任務があるため、できることなら何の心配もなく帰ってもらいたいのである。

 

二日目の夜も祖母は相変わらず苦しそうだった。

横になると苦しいと言うので、私が背もたれになり後ろから抱きしめるようにして眠ってもらった。

最初こそ「小さい頃は泣いて帰った太郎を婆ちゃんが抱いて寝ていたのにね」と昔の事を思い出して笑顔も見えたけれど、眠りについてもすぐに目を覚まして「苦しい」と訴えてきた。

目を覚ました祖母は意識が混乱しているのか私を祖父だと思い込み、「じいちゃんも疲れるから寝てください」と言い始め、「ばあちゃん!俺だよ!太郎だよ!」と話しかけても「太郎?あの子はいつも怪我をして帰るから、しっかり見てあげてくださいね」と、30年くらい前に意識が飛んでいるのか気が付いてくれない。

 

寝ぼけているのか、それとも痴呆が始まったのだろうか?と心配になっていると、突然ゴミ箱に手を伸ばしてゴミを出し始めたので、「ばあちゃん何してるの!?」と聞くと「ゴミを出さないと」と深夜の3時に言い始め、「今は連休中だからゴミは出せないよ」と言ってもゴミをまとめようとする手は止まらない。

「ゴミは俺が出してくるから」と話を合わせて台所のゴミ箱に捨てて、祖母の手をウエットティッシュで拭いていると「じいちゃん珈琲が飲みたいんでしょ?でも息が辛くて動けないの」と言い出した。

「珈琲はいらないよ。大丈夫。」と伝えると、「じいちゃん、結婚してくれてありがとう」と唐突に告白され、それは本人に言ってあげてと困惑しながらも、ドラマなんかで見る死ぬ前のシーンのような気がして動揺した(滝汗)

 

呼吸も荒いし眠らないし脈は早いし、どうすれば良くなるのかが分からなくて困り果てたが、余りにも様子がおかしいので救急車を呼ぶと救急隊の方がすぐに駆け付けてくれた。

サイレンの音が聞こえたので祖母に「病院へ行くよ」と伝えると、「行きたくない」と言い張ったが、暖かそうな上着を着せて抱え上げ救急車へと乗せた。

何件か断られたけれど受け入れ先の病院も決まり、祖母は病院へ運ばれたのである。

 

病院で祖母は点滴をしながらベッドに寝かされた。

変わらず胸は苦しいようで眠れていなかったけれど、意識はしっかりして私を認識できるようにはなっていた。

 

検査のできる人が朝にならないといないらしく、数時間ベッドで休んでいると「太郎ごめんね迷惑をかけて、ピナちゃんは一人で大丈夫?」と聞いてきたので、「一人でも大丈夫だよ」と返事をしたが、その後も「ピナちゃんピナちゃん」と言ってくるので、「会いたいの?」と聞くと頷いていた。

そんな祖母の姿を見ると、里帰りが心配だがピナちゃんに祖母の容態を話そうと思ってしまった(涙)

 

明け方になり検査が始まると祖母はどうやら心不全らしく、心臓のポンプが上手く機能していなかったようで、連れてくるのが遅ければ脳梗塞になっていたかもしれないと言われて肝を冷やした。

昨夜の私を祖父と勘違いしていた痴呆に似た症状は、せん妄症と言って老人が体や心が弱っている時に見られる症状のようである。

入院する必要があると言われて、書類にサインをしたり病状を書き込んだりしていると9時を過ぎたので、もう兄も起きているだろうと連絡をして、入院に必要な祖母の着替えなどを持ってくるように伝えると、「パジャマや下着がどこにあるか分からない」と言うので「このポンコツ野郎が!」と思ったが、私も分からないのである。

 

兄には「ピナちゃんが知ってるから迎えに行ってくれ」と頼んで、ピナちゃんに兄が来る事と祖母の容態を伝えると驚いていたが、入院に必要な一式を用意して昼過ぎに兄と病院に来てくれた。

お昼寝用のマイ枕を持って(驚)

泊まる気なのかい?

 

「病院へは泊まれないよ」と伝えたのだけど、「先生に聞いてクダサイ(´・ω・`)」と食い下がるので聞いたけれど、やはり泊まれないと言われてピナちゃんはしょんぼりしていた。

その頃になると祖母は薬が効いたのか、容態も安定して眠れるようになって安心したが、目を覚ました時に兄が祖父に知らせると言うと「じいちゃんは温泉で休んでるのに教えたら承知しないよ!!」と、祖父の療養の邪魔をしてはいけないと怒るのである。

 

しかし朝から祖母の携帯には祖父から大量の着信もあり、さすがに入院となれば隠しきれるものではない。

兄が祖父へ電話をすると「何で早く言わねーんだ!」と怒られ、祖父に連絡をしたことを知った祖母からも「何で言うの!じいちゃんが心配するでしょ!」と怒られていた(笑)

理不尽である。

 

祖父は1時間もしないうちに湯治先の温泉から飛んできたが、祖母から「何で来たの!来なくてもいいのに」と言われ、「くたばった姿を見にきただけだ!」と痴話げんかを始めていたけれど、部屋へ入ってきた時の焦った表情から安堵の表情に変わっていた。

何て素直ではない老夫婦だろうか。

昨夜の意識が薄れた時の祖母の愛の告白を知っている私は、祖父母の言い合いを聞きながら徹夜明けで眠いので帰宅したのである。

 

本日も朝一番で見舞いに行ったけれど、私達よりも早く祖父は到着していた(笑)

そして予想通り、ピナちゃんは「フィリピンへ帰りマセン(´・ω・`)」と言い出している(涙)

 

家族にお年寄りがいる方へ

看護師の方に教えて頂いたのですが、救急車を呼ぶべきか迷った時には

#7119

に電話をすると看護師が適切な判断をしてくれますので、自分で判断をせずに電話をしてみてください。

お年寄りは急に体調を崩すことがありますので、これまでの病歴をまとめたメモを家族で共有して、入院となった場合に備えて入院セットを用意しておきましょう。

追記:地域によっては#7119の救命救急安心システムのサービスが提供されていないようです。お住まいの地域が対象地域かご確認ください。

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