日本人の特殊スキルを覚えたフィリピーナ

フィリピンでは日本で販売されている日清カップヌードル(シーフード味)が、尋常ではないほどの人気を誇っており、日本へ出稼ぎにきているフィリピーナ達の定番のお土産となっている。
空港に行く機会があれば、フィリピンエアラインのチェックインカウンター周辺を見てほしい、カップヌードルを箱買いしたフィリピーナ達の姿を目にするはずである。

日清のおかげでフィリピンでは日本のラーメンは最高に美味しいというイメージが構築されており、日本へ来るフィリピン人達は「本場日本のラーメンはどれほどの物なのだろうか?日本に行くからには食べてみないとな!」と大きな希望を抱いている。
実際に日本でラーメンを食べたフィリピン人の多くは、あまりの美味しさに衝撃を受け、日々の食事のローテーションにラーメンが組み込まれる事となる。
来日したてのピナちゃんも例外ではなく、初めて食べた日本のラーメンの味に感激し「何が食べたい?」と聞くと答えはいつも「ラーメン」であった。
私はなるべく幅広く色々なジャンルの食事を経験してもらおうと考えていたのだが、フィリピーナにとって日本のラーメンは麻薬のような物で「プリーズ!プリーズ( ・Д・)!」と懇願され、来日当初はかなりの頻度でラーメン店に足を運んだものである。
味噌・醤油・豚骨・塩と日本のラーメンは大きく4つに分類される。
その中でも取り分けピナちゃんの心を奪ったのは、豚骨系のラーメンであった。
猫舌のピナちゃんは豚骨ラーメンを20分近くかけて食べるのだが、最後の方は麺は伸びスープも冷めている。それでも美味しいらしい。
ある日、ピナちゃんはラーメン屋で自分だけが食べるのが遅い事に気がついた。
ピ「日本人はラーメン食べる、早いデスネ(‘A`)」
私「ついに日本人の秘密に気がついてしまったようだね。」
ピ「何デスカ?秘密があるデスカ(‘A`)?」
私「日本人は熱い物を食べれるスペシャルスキルを持っているんだよ。」
ピ「Σ(゚д゚;)!教えてクダサイ! 私もラーメン早く食べたいデス」
私「本当は日本人以外に教えたら駄目なんだけど、ピナちゃんは私の配偶者で日本人みたいな者だから特別だよ」
ピ「イエヘーイ!! ありがとぽ(*´Д`*)」
私「私とピナちゃんの食べ方で何が違うか分かる?」
門外不出の特殊スキルを身につける為、ピナちゃんは私がラーメンを食べる姿を真剣に見つめ自身との違いを探している。
ピ「分かた!途中でカットしないデス! あと音がうるさいデス(`・ω・´)!」
私「よく気がついたね!ピナちゃん才能があるよ!」
外国人は麺をすする時にマナーの観点から音を立てない。一方で日本人はパスタを除く麺類を食べる時にはズズズーっと音を立てて食べる。
親から子へと脈々と受け継がれてきた音を立てて麺をすする行為は、麺を口に入れるのと同時に空気を送り込む事で麺の温度を下げるという、熱い物を食べる時には非常に理にかなった行為なのである。
ピ「トライするデス」
ズズズー・・カハッ!

(|||゚Д゚)ゲフー:∴

吸い込み過ぎである。

何度も咽せながらも熱いラーメンを食べたいという情熱だけで、ピナちゃんはその日から日本人のように音を立ててラーメンを食べるようなった。

服にスープを散らすので教えた事を少し後悔もしたが、今では人並みの早さでラーメンを食べれるようになり、ラーメンを食べる時は何処か得意気である。

上手にラーメンを食べれるようになったのが嬉しかったのか、覚えたての特殊スキルをスカイプでママに見せていたが、フィリピンではマナー違反なので怒られてションボリしていた。
こうしてピナちゃんは、また一歩日本の文化に馴染んだのである。

フィリピーナの心を掴む

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