霊媒師系ブロガーの宿命なのか、私の元には霊に悩まされる子羊達から助けを求める声が届く事がある。
先日も不動産管理会社の上野さん(仮名)から「入居者さんがアパートに霊が出ると言っている」と連絡があった。
気のせいだと伝えてください
有無を言わさず電話を切ったのに、「何で切るんですか(怒)」とすぐさま掛け直してきたので、「そんなもん(霊)いるわけねーだろ!」と逆切れをかましておいた。
感度抜群の妖怪アンテナ(意味深)もシナシナだし、その理由は一つしかない。
霊が出ると言い張る入居者の住むアパートは、悪い意味で猛者の集まるアパートなのだ。
購入時は家賃未払い率がイチロー超えの6割という「メジャーリーグかな?」と疑いたくなる惨状で、前オーナーが匙を投げた物件である。
そのような物件に一般常識を持っている方々に入居してもらっても、嫌な思いをさせたり短期間での退去に繋がるのが目に浮かぶ。
そこで「毒をもって毒を制す」の運営方針のもと、年齢・宗教・性別・国籍・職業(暴力団以外)を問わず、問題があって他の物件で断られた方に格安で貸しているが、数年に渡る草の根活動のお陰でアパートも平和を取り戻しつつあり、近頃は家賃保証会社の審査を通った人に限定して毒素を薄めている。
お客様満足度向上を目指す私でも、そんなクレーム(幽霊)を真に受けるわけにはいかない。
「信じる心を失ったのかい?」と思われるかもしれないけれど、世の中とんでもない思考回路の人もいるのである。
現に管理会社が「他の物件を紹介します」と提案しても、「幽霊を何とかしろ」の一点張りなうえ、連日長時間電話をかけてきて仕事にならないようだった。
これは目的が他にあるな‥‥‥
単に暇なのか、設備をサービスで付けさせる布石なのか、虚言癖があるのかは分からない。とにかく嫌な予感しかしないのだ。
「その部屋の入居者はよく宝くじに当たるから座敷童系の良い霊だ」とか言って、上手いこと話をまとめてもらおうとしたが、「嘘は言えません」と、上野さんは変なところで真面目なのである。
入居者は何とかしろと繰り返すばかりで具体的な要求を言ってこないため、こちらとしても対応に困る。
こんな寝言のようなクレームに時間を取られて、ピナちゃんや婆ちゃんと過ごす時間を無駄にするわけにはいかない。
自主管理物件ではない限り、通常は管理会社が全て上手いこと対応するけれど、長引きそうな場合は直接出向いて短期決着を心がけている。
そこで管理会社に「凄腕の霊媒師を連れて除霊に行くと伝えてください」と言うと、「そんな知り合いがいるんですか?」と驚いていたが、その霊媒師とはもちろん私なのである。
上野さんは猛反対していたけれど、「それなら自力で何とかしてくれますか?」と伝えると、「空いてる日を確認します」と速攻で手のひらを返した。
入居者と連絡を取り翌日アパートへ行くことになったが、大口を叩いたくせに実は除霊なんてしたことはない。
全く気は乗らないけれど「除霊する」と言った以上、最低限の装備を整えておくのが大人の対応だろう。
私はすぐさまツイッターで除霊事情に詳しい方へ助けを求めた。
明日除霊することになったんだけど、塩を持って行けばいいのだろうか(困惑)
— ピナ山太郎 (@pinayamataro) June 10, 2020
すると先輩霊媒師の方々から、榊の木、清酒、日本酒、鈴、白鉢巻、ファブリーズ等の除霊アイテムを教えてもらえた。
それを参考にして、なるべくお金をかけない方向で、偶然オフィスにあった魔除けの塩と、またまた偶然庭に生えていた霊の苦手な木の枝を用意した。
翌朝、幽霊退治の支度をしているとピナちゃんから「どこか行きマスカ(`・ω・´)?」と聞かれ、「入居者が部屋にゴーストがいるって言うから見てくるよ」と、妖怪退治の予定を伝えると、お化けが苦手なピナちゃんは「危ないからダミ‼((((;゚Д゚))))」と全力で止めてきた(汗)
何だったら管理会社の人にだけ行ってもらえと、軽く酷いことも言っていた(笑)
「あんなフワフワした奴に負けるわけねーだろ」と説得するのだが、「アコ知ってマス‼食べられるのコトヨ((((;゚Д゚))))」と譲らない。※アコ=私
ゾンビだと思ってるのかい?
幽霊と聞いて日本人とフィリピン人では、思い浮かべるイメージが違う事を知る。
ピナちゃんにゴーストは入居者の嘘だし、仮にいたとしてもゾンビと違って日本の幽霊は会話ができるくらい知的だから大丈夫だと説明を試みる。
ホラー映画の影響で霊が怖いと思い込むのは仕方がないけれど、幽霊サイドの気持ちを考えると怖さは無くなる。ピナちゃんにも幽霊の気持ちを想像してもらった。
私に個人的な恨みを持つ幽霊なら話は変わるが、その辺をチョロチョロしている野良幽霊であれば、手あたり次第に危害を加えるのはリスクしかない。
仮に現世で私を倒したとしても、腹を立てた私は化けて出るだろう。
わけも分からず殺された私は必ず報復するし、幽霊サイドからすると無闇に呪って敵を増やすのは得策ではないのだ。
東西冷戦が物語っているように、報復されるリスクがあるとうかつに手は出せない。
それは幽霊業界でも同じことが言える。
私「どうだい?ピナちゃんがゴーストなら俺を攻撃するかい?」
ピ「プロテクトしマス(`・ω・´)!!太郎が危ないは噛みマス」※訳:太郎が危ない時は噛みついて守ります!
ちょっと伝わらなかったかな・・・守護霊みたいになってる(汗)
すっかりゾンビ気分になったピナちゃんに腕を噛まれながら玄関へ向かう。
「一緒に行きたいの?」と聞くと「アヨコ(|| ゚Д゚)!!(訳:嫌です)」と吐き捨て、すごい勢いでピりピン人は逃げていった。
その後、コンビニで除霊用の日本酒を買い、迎えに来た管理会社の上野さんと一緒に車でアパートへ向かった。
この天気の悪い日に除霊の真似事なんかをして、私は一体何をしているのだうか?もう子供じゃないんだぞ・・・
そんな事を車内で考えていると「契約した時は真面目そうな子だと思ったんだけどなー」と、思いに暮れる私の気も知らず話しかけてきた。
アパートへ到着し部屋のインターホンを鳴らすと、髪を金色に染めて一昔前のシャカシャカするタイプのズボンをはいた、いかにもな若い女性が出迎えてくれた(涙)
どう見たら真面目そうに見えたのだろうか?目を細めてもやんちゃくれなのが分かる。
そして部屋へ入ると恋人だろうか、これまた似た感じの頭の悪そうな若者が床に寝転がっていた(血涙)
「で、どうすんの?」
挨拶もそこそこに、ニヤニヤしながら女性が声を上げる。初対面なのにタメ口である。
夜中に霊の声が聞こえて怖くて眠れないと、12時間は寝ていそうな肌ツヤをした顔でのたまうのである。
上野さんは「古いアパートなので上階や隣の声が聞こえているのかもしれません」と説明していたが、女性は全く聞く耳を持たず「これって精神的瑕疵でしょ?まずいんじゃないの?」と、”クレームで年収1,000万円”みたいな本でも読んだのか、それとも誰かに入れ知恵されたのか、その風貌からは想像できない精神的瑕疵という小難しい用語が飛び出した。
要は精神的瑕疵を黙っておく代わりに、家賃を減額するか現金を包めと言いたいのである。
このような馬鹿げた交渉方法で上手くいったことがあるのかい?
せっかく足を運んだから大人しく話を聞いていたけれど、ボロアパートだとか言われて、いや確かにボロいのは事実だけど腹が立ってきた。
そろそろ助け舟を出してあげようと話に割って入ったが、異常なまでに女性の気が強い。
優しそうな上野さんだけでなく、自分の倍以上ある体格の、不機嫌そうに日本酒と塩を持つ謎のゴリラにも動じず突っかかってくるのである(驚)
片や男性は見た目と違い気が弱いのだろう、小声で「やめろ!」と女性を制止しようとしていた。
その行動を目ざとい私が見逃すわけもなく、直接男性に何か言われたわけではないけれど連帯責任として狙いを男性に絞り、俺の方が演技派なんやで!と気が狂った勢いで恫喝すると、客なのに反撃されるとは思っていなかったのか途端に二人とも大人しくなった。
「もう大丈夫です」と早く帰ってほしそうな男性に、「何が大丈夫なんだよ?」と日頃飲まない日本酒を買わされた無念をはらすべく、「今日ここに泊めてくれよ」と酔ったオッサンのようにネチネチと絡み、スッキリしたところで引き上げることにした。
初犯なので特にペナルティは与えず、「近隣に迷惑かけたり、またしょうもない事をしたら草むしりさせるからな」と言い残し、無事に除霊を終えて背筋も凍るような幽霊事件は幕を閉じた。
幽霊が苦手な方は恐怖のあまり体が冷え切っておられると思いますので、もしアレでしたら、体と心が温まるピクピク料理長の肉じゃがレシピをご覧ください(懇願)
私達夫婦は結構な頻度でレンタルDVDを利用している。主にピナちゃんの語学や日本文化の学習目的でドラエモンや日本のドラマ等を借りていたのだが、その事を友人と話しているとレンンタルDVD業界が震撼するサービスを教えてもらった。&[…]
この記事は仕事をしない旦那を心配する妻の続きです。連日の猛暑が影響して仕事をサボり気味だったが、ピナちゃんから失職したのではないか?と心配されてしまい、大黒柱の威厳を保つため暑さに立ち向かい仕事を再開する事にした。&[…]