潜伏する祖父を捜索

祖父がやらかした。
あれほど無理をしないよう言っていたのに、釣り好きの祖父は魚を求めて色々な場所へ車でウロチョロ出かけるものだから、私達の恐れていたことが起きてしまった。

90歳も目前なのに千葉県某所まで行軍していた祖父は、体の異変を感じて持参している体温計で熱をはかると、高熱が出ていたようでインフルエンザにかかったようだった。

祖母に「頭が痛いから治るまで帰らない」と連絡をしてきて発覚したが、入院するわけでもなく車中泊を行いながら体力の回復を待つつもりなのである。

 

昨日、祖母からの要請を受けて、祖父の救出に向かおうと現在地を聞くため連絡をした所

来るな!

なんでだよ(驚)

 

一瞬千葉に女でも作って浮気をしているのかと脳裏をよぎったが、電話越しに聞こえる弱々しい声からもインフルエンザなのは間違いないだろう。

私の仕事の邪魔をしないように遠慮をしているのだと思い、祖父に「今日は暇をしているから遠慮をしなくても大丈夫だ」と伝えると、「いやそうじゃなくて、ピナちゃんにうつると可哀そうだから」と、孫のスケジュールよりもピナちゃんを気遣っての”来るな”であった(涙)

超健康優良児のピナちゃんは風邪をひかないと伝えても、「お前じゃないんだから」と数年前に風邪をひいたことのある病弱な私に言ってきて、ピナちゃんは子供の頃に風邪をひいて以来、一度も風邪をひいたことがない事を説明しても信じてはくれなかった。

 

祖父はそんな状態でも車中泊をすると言うので、せめて宿をとってくれとお願いしても、「旅館の人に迷惑をかけるし、そんな金があるなら釣り竿を買う」と、命と釣り竿を天秤にかけて釣り竿を取るという釣りバカぶりを見せつけてきた(汗)

「じいちゃん釣り竿たくさん持ってるじゃねーか」と言っても、私は釣りに詳しくないので失念したが、〇〇と言うメーカーの竿を狙っていると咳き込みながら力説してくるので、「俺が買ってやるから」と言うと「分かってねーな、釣り竿は自分で買うから愛着が持てるんだ」と、謎のこだわりをみせてきて埒が明かないのである。

 

歳も歳だし肺炎にでもなったら死んでしまうかもしれないので、兄弟の中で唯一祖父に甘やかされていた姉に連絡を取り、上手いこと祖父の現在地を聞き出すように指令を出した。

姉からの吉報を待っていると、10分後に「じいちゃん口を割らない」と姉から電話があり、諜報員としての無能ぶりに「じいちゃんが居場所を言わないなら、私は犬の糞を食べるくらい言ったのか!」と叱責すると、「言うわけねーだろ!」と日頃は上品ぶっている姉が本性をチラリと覗かせてきた。

自身のポンコツぶりを棚に上げて「太郎何とかして迎えにいきなさいよ」と、その迎えに行くための場所を聞き出せなかったくせに、可愛い弟に中々の無茶ぶりするので、「黙れこの厚化粧!」と吐き捨て電話を切ると、すぐさま物凄い着信があったが出なかった。クワイ

 

その後”祖父発熱”の知らせは祖母により兄や父のもとにも届き、ピナ山家を騒がせる事態となったが、肝心の祖父が潜伏中の場所を言わないため捜査は暗礁に乗り上げていた。

私達も祖父に連絡を取って体力を使わせるよりも、車の中と言えど休んで体力を回復させた方がいいのではないかと思い昨夜は連絡を絶ち、翌日に改めて祖父の体調を確認してから対応を考えようとなった。

しかし今朝、事態は急展開を迎えたのである。

つづく

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